公園にはたくさんのハトがたむろし、人の落とした食べ物をついばみ歩く姿はよく見る光景ですよね。
マンションなどではハトのフン害に悩まされている場所もあるようです。
ハトの繁殖力の高さの理由は、他の鳥とはちょっと異なる独特の子育てにあります。
ピジョンミルクとは
ピジョンミルクとはその名の通り「鳩乳(pigeon milk)」という意味です。日本語では素嚢乳(そのうにゅう)と呼ばれます。
素嚢とは、消化管の一部であり、口から食道を通って入ってきた食物を一次的に貯蔵し柔らかくする場所です。この時、素嚢では栄養の吸収は行われません。
一般的に鳥は、親鳥が捕まえてきた昆虫や魚をそのままヒナの口に入れて食べさせてやります。
しかし、街中でよくみられるドバトやキジバト等のハト目の仲間やフラミンゴコウテイペンギン、コウテイペンギンは、このピジョンミルクで子育てをすることが報告されています。
ピジョンミルクは栄養満点!
ヒナが生まれる時期の親ハトは素嚢の内壁が通常の20倍ほどに肥大していきます。この内壁が脱落してピジョンミルクが作られます。
ピジョンミルクは、薄い黄色をした粘り気のある液体です。哺乳類の母乳と比べて、タンパク質や脂肪の含有量が非常に高いことが知られています。親鳥は口から吐き戻したピジョンミルクをヒナに与えます。ハトのヒナは、孵化して1週間はピジョンミルクだけで育ちます。その後は昆虫等の餌に慣れさせつつ、ピジョンミルクで栄養を補給していきます。人間の赤ちゃんの離乳食みたいですね。
ピジョンミルクを与えている期間は、親鳥はピジョンミルクに固形物が混じらないように絶食します。ピジョンミルクはメスだけではなく、オスもメスもピジョンミルクを産生・分泌することができるので、1羽のヒナは親の2羽から栄養を補給することができます。
ピジョンミルクは栄養価が高く、ヒナの育成にも重要であるため、人工のピジョンミルクの開発も検討されていますが、なかなか上手くいっていないようです。
ピジョンミルクで育てるメリット
ピジョンミルクを与えて子育てすることのメリットは、なんといってもその繁殖シーズンが限定されないことです。
例えばツバメの場合は5月~6月の昆虫発生時期と子育てのシーズンが合致しています。これは、ヒナへのエサの供給を十分に行うためです。
しかし、ピジョンミルクを与えるハトではこの心配は全くいらず、これにより一年中の繁殖が可能となります。
ただ、親鳥が自らの栄養をヒナに与えることになるので、1度に育てられるヒナの数は1~2羽と少なくなります。
少ないヒナを栄養満点のピジョンミルクで確実に育てる。しかもそれは1年間のうちいつでも可能。
ピジョンミルクは繁殖活動において非常に有利な状況を作り出すことのできる能力です。これがハトの生存戦略です。
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